Au Revoir Les Enfants
ルイ・マル監督作『さよなら子どもたち』を観たのは15歳のときだった。
今思うと、その年から始まった地元の映画祭の先行上映だった。市街地にポスターが貼られていて、これは名作に違いないと思った。タイトルも良かった。
はたして、実際観た映画は、予想とは違っていた。子ども時代に別れを告げる映画だと思っていたが、そうではなかった。
もっとずっと大きなものだった。
描かれるのは、少年時代の夢と同等のような世界。
主人公の通う学校に、ある日少し謎めいた転校生がやって来る。すぐに仲良くなる二人。彼らはお互い学校の寄宿舎で暮らしている。そこでは、時間は美しく流れていく。
教室を飛び出して森を彷徨った冒険や、眠る前に語り合った共通の秘密、そして一瞬、何もかもを越えられそうだった将来への期待・・。
場面は淡々と、大切なあの頃を浮かび上がらせる。まるで永遠に続くかのように。
だがそれは、やがて「さよなら子どもたち」となっていく世界なのだ。
物語の終盤、不意に彼らに別れが訪れる。
寄宿舎は、密かにナチスからユダヤ人を守ることを行っていた。だが密告により、その秘密がばれてしまう。転校生はユダヤ人だった。
不意に目の前に厳然たる現実が現れる。何も出来ず、ただ連れられていく友を見送ることしか出来ない主人公。
その時、嫌というほど思い知るのだ。生きていく中で、時に大切な何かをただ捨て去ってしまうこと。時に重大な何かを、なすすべもなく受け入れるしかないこと。
寄宿舎の代表だった牧師さんも連行されてしまう。最後に振り返り、牧師さんは静かにこう言う。
「さよなら、子どもたち・・」
別れはいつも物悲しい。何かはそこで終わり、まったく違う何かが始まる。嫌だと泣き叫んでも、現実が変わるわけでもない。すべてはそこに置きざりにされてしまう。
それでも、あの別れを、一緒に過ごした日々を、決して忘れることはない。
さよならのずっと奥に、子どもたちは永遠にい続ける。