Honeymoon Express
Wendy & Lisa / Wendy and Lisa (1987)
プリンスのバンド「ザ・レボリューション」のメンバーだったウェンディとリサが、バンド解散後、半ば必然のように組んだユニット、ウェンディ&リサ。
レボリューション時代から人気のあった2人が、バンド解散の騒然とした中、ユニットを組むのは、ファンには当然の流れでもあった。
はたして、シングルとなった『Waterfall』は、プリンスらしいリズムを残しつつ、彼女たちの持つポップな感覚に溢れ、これから始まるユニットの将来を照らしているかのようだった。輝かしい女性ロック・ユニットの明日を。
プリンスの異次元の才能は誰もが認めるところだが、アルバム『アラウンド~』や『パレード』において、彼女らが大きな役割を果たしていたことは明らかだった。
(シングルになった『Pop Life』のサイケなシンセ部分は2人が作ったという話しだし、パレードからのシングル『Mountains』もほぼ彼女らの作。ちなみにウェンディ&リサの初期サウンドはこの路線。プリンスの影響下、というより、プリンスへも影響を与えていたと見るべき)
彼女らはこの後、89、90年とアルバムを続けざまにリリース。サウンド性を深めると共に、さらなる広い音楽性を取り込み、評価を決定づける。
だが、その評価に見合うようなセールスには恵まれず、アルバムも90年を最後に出なくなってしまう。
サウンド面ではブラックリズムを基調とし、タイトで、音と音のスペースの取り方も素晴らしかった。ウェンディのサウンド・クリエイトとギターのカッティングが凄かったのに加え、リサのあの独特のシンセのセンスが、曲の雰囲気に絡まって本当に絶妙だった。
いま思えば、90年代中頃から一大潮流になっていくサウンドアプローチを、この時点で実践していた。その後、フリーソウルと連なっていく音の在り方。そして、アン・ヴォーグやS.W.V、TLCといったガールズ・グループたちが、押し広げていく世界。
もう少し早く時代が追いついていれば、と惜しまれる。彼女たちの登場は、早すぎたのだろうか・・。
でも、それがウェンディ&リサなのだ。
才気溢れる若き2人の女性が起こした、レボリューション。
その革命は、やがて後続の女性アーティストたちが成し遂げていく。