English Settlement 1982
XTC / English Settlement (1982)
XTCはどのアルバムも素晴らしく、ベストを挙げるのが難しいけれど、このアルバムを最高傑作と呼ぶ人も多いですね。
(あと「Black Sea」や「Skylarking」を挙げる人も多し)。
確かに全アルバム中、最も繊細な職人芸的音作り、綿密に計算された密室性の高さなどは、アルバムタイトルが示す通り、実に英国的。それでいて凝った音作りの中にストレートに出るポップさは、他のどのアルバムより無邪気である気もします。
デビュー時のパンク的なアプローチから、ニューウェイブの先駆的作品を創り出してきた彼らが、そのダイナミックさやエキセントリックさより、ポップ・センスを前面に押し出して、アイデアを縦横無尽に展開させたような作品。
この頃からライブ活動を行わなくなったことが、彼らの音のダイナミズムを失わせてしまったと見る向きもあるようだけれど、それは逆に、更なる緻密なポップ感を生み出したといえると思います。
アルバムの中で特に好きな曲は、印象的なギター・リフが圧倒的な広がりをみせる「Jason And The Argonauts(63年の同名映画からのタイトル)」と、このアルバムの中では最もニューウェイブ的な「Fly On The Wall」です。
こんなの聴いてしまったら、やっぱりXTCにはまってしまう・・。
机の奥の大切な宝箱のようなこのポップ・アルバムの中に、絶妙にアヴァンギャルドさとロックさを溶け込ませているところが、さすがイングリッシュ・セツルメント(英国人)、職人です。
Who's Zoomin' Who?
Aretha Franklin / Who's Zoomin' Who? (1985)
Soul Queen...
Owner Of A Lonely Heart
Yes / 90125 (1983)
このアルバムはもう何百回聴いたか分からない。それこそ、高校時代もっとも聴いたアルバムBest 3に入ると思う。
今では長いイエスの歴史の中の1枚、という認識のされ方が強いけれど、バンドが解散していたこの時期、本来ならイエス再結成アルバムではなく、「元イエスのベーシスト&新進気鋭のギタリスト(トレバー・ラヴィン)のニューバンド」のアルバムになるはずだった。
それが、結果的にバンドに元イエスの面々(第二期イエス)が集まったため、新生イエスとして出発することになる訳だけど、ある意味それは良くもあり、悪くもある。
(多分イエスを名乗らなければ、トレバー・ラヴィンはもっと評価を受けていたに違いないのに・・)。
ただ、過程はどうあれ、結果的にこのアルバムは非常な名作となったので、その選択は正しかったのだろうとは思う。
往年のプログレ楽曲の中に、キャッチーでメロディアスなシングル曲を入れること、聴きやすくしながらも、ディープに変拍子が続く音世界を展開していくこと。
もう一つ、このアルバムを特徴づけた大きな要素として、トレバー・ホーンのプロデュースが挙げられる。
当時、真似しようとして誰も出来なかったオーケストラ・サンプリングの衝撃、非常に洗練されたクリアーな音、大胆なニューウェーブ・サウンドの導入・・。
『90125』は、鬼才トレバー・ホーンの手腕と、超絶テクを自在に繰り出すトレバー・ラヴィンのギタープレイによるところが大きかったと思う(もちろん他のメンバーもテクニシャン揃い)。
ニューウェーブに洗練されたサウンドの中で構築される、めくるめく音世界。どこまでも無限に広がり、幻惑的で、時にハードに、次々に変化していく重層なサウンド。
このアルバムには、プログレの雄として裏打ちされた高度なテクニックとスタイルに、最先端の音とアレンジを大掛かりに持ち込み、両者をうまく融合させたダイナミックな一瞬がある。
ドラマチックでありながらポップであること。
それは間違いなく、ロック界に、80年代イエスの確かな足跡を残すことになった。