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Motortown

 The Miracle Of The Kane Gang.jpg
 Kane Gang / The Miracle Of The Kane Gang (1987)

 ケーン・ギャングの『モータータウン』は、高校生の頃の想い出の曲。
 ネオ・アコースティックなサウンドは当時の音楽シーンを切り取っているし、美しくも儚い曲調が、かけがえのない10代を表している。

 (実際の歌詞の内容は、当時の英サッチャー政権に対する批判であり、新自由主義政策によって誘致した日本の車会社が、現実には地元の失業者を増やしただけじゃないか、という内容。確かにこの時期のイギリスの失業率は非常に高い。ただ一方で、サッチャー政権によるこの政策が、イギリス経済を立ち直らせた、と評価する意見も多い)

 この曲がただの美しい10代の煌めきだけで終わらないのは、同時に力強いビートと、ソウルフルな熱気に満ちているからである。まるで同時期に活躍したデペッシュ・モード(インダストリアル・ビート)を、そのままナチュラルにしたようなサウンド。
 だが同じように力強く美しいサウンドでありながら、デペッシュ・モードが評価の高いまま長くアルバムのリリースを続けたのに対し、ケーン・ギャングはいつの間にか消えてしまった。
 この後90年代に入り、アコースティック・ソウルが音楽シーンを席巻していくことになるのに、そのはしりである彼らが、新たな日を迎えることはなかった。
 それがもしも彼らを、ある特定の時代の美しい象徴とさせているなら、時の流れは何と残酷なことか。
 モータータウンの声なき声が、儚く揺れるギターとシンセの彼方で、そっと消えていく・・。

 ※先日、サッチャー元首相が亡くなった。その時、まっさきに『Motortown』のことを思い出した。あの頃のブリティッシュ・シーンの一側面って、サッチャー政権との闘いだったんだな、と思い出された。
 英経済にとっても、音楽シーンにとっても、次の時代に大きく花開くための準備段階の時だったのだと思う。

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