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Made Of Stone

 Fools Gold (1989).jpg
 The Stone Roses / Fools Gold (1989)

 最も好きなアルバムを選べ、と言われたらすごく難しいし、最も影響を受けたアルバムは何か、と言われたら、答えに窮してしまう。
 きっと多くの人がそうだと思う。好きなアルバムをたった一枚なんて選べないよ、まったく・・。
 でも本当は、だいたい決まってるんだ、自分の中では。

 ストーン・ローゼズの『Fools Gold』は、記念すべき1989年のデビュー・アルバムの後にリリースされたシングル。
 今聴くと、メロディより何より、そのリズムこそが、後のアシッド・ロックの基盤になっていたことが分かる。

 デビュー・アルバムが、繊細なギターと美しいメロディによってサウンドを際立たせていたのに対し、ここでは強力なリズム隊(レニ&マニのコンビ)によるうねるビートが、バンドの音をいっそう際立たせる。
 まさにそれが、90年代型リズムの誕生だった。だからそのまま次のアルバムを作ってくれれば、同時代最高の作品になるはずだったし、90年代前半のロックシーンの長い空白なんか生まれなかった。
 ローゼズ不在の「何もない」ことに対する深い失望だって、経験せずに済んだのだ。
 あの、眩暈がするような失望を・・。

 ファースト・アルバムを聴いた時は、本気で革命が起こると思った。
 まだ10代だった。アシッドの疾風の中であらゆるサウンドとダンスが融合した、新たな一体感のある革命。
 だが、その後に起こった、まさかの停滞。
 蘇れ、ローゼズ、ずっとそう願っていたのだ。長い不在の間だって、ずっと・・。

 何年か前、イアン・ブラウンが雑誌のインタビューで、「ファースト・アルバムのすぐ後に『フールズ・ゴールド』みたいなサウンドのアルバムを作っておくべきだった。みんな期待してくれていたのに、僕らは応えられなかった・・」と言っていた。
 その時は一人、心の中でそっと泣いた。実際にそうしてくれていたら、どんなに素晴らしかったか。

 でも、アルバムが出なかったから泣けたんじゃない。ちゃんとそう思ってくれてたのかと思ったら泣けてきたんだ。
 もう遥かに10代は過ぎてしまっていたから。信じた革命は、いつか遠い彼方だったから。

 だからもう一度。青春時代のすべてを終わらせるために。
 蘇れ、ストーン・ローゼズ。

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